『素人が材木屋に飛び込んだ日』
正直に言うと、僕は何も知らなかった。
建築のことも。
木材のことも。
職人という生き方のことも。
何も、知らなかった。
それでも、この世界に飛び込んだ。
知識はない。
経験もない。
あるのは、一所懸命さと、がむしゃらさだけ。
それで十分だと、当時は本気で思っていた。
今思えば、ずいぶん無謀な話かも知れない。
若いが故のパワー勝負って所かな。
冬の郡上製材工場は、雪に埋もれる。。。
ベテランたちは、その雪の中を、フォークリフトで平然と動き回る。雪の降る寒いなか、頭の下がる思いで見ていた。
が、僕にはそれができない。いまだにフォークリフトには乗れず。
外で雪と格闘する先輩たちを横目に、僕はずっと室内で資料を作っていた。
当時は住宅事業部が発足したばかりで、住宅部に仕事は薄く、製材の仕事で食べさせてもらっていた。それだけに、暖房の効いた部屋で、ぬくぬくと仕事をする僕はこれでいいのか?と思ったり、後ろめたさや罪悪感すら感じていた。
当時はまだ、ひだまりほーむという名称すらなかった時代。
何度も何度も失敗をした。
覚えの悪さに、自分自身、苦笑いするしかない場面もたくさんあった。
でも、本当にみんなが助けてくれた。
雪の中で働く大先輩。
木のことを知り尽くした大工。
何も知らない若者を、誰も見捨てなかった。
優しくも、丁寧でもないが、愛は感じた。
なぜ?
ずっと考えていた。
技術があったからではない。
知識があったからでもない。
経験があったからでもない。
ただ、一所懸命だった。
それだけだったように思う。
不器用でいい。
知らないことは、恥ではない。
本気でやろうとする人間を、現場は放っておかない。
雪の中でフォークリフトを操るベテランの背中も、室内で資料と向き合っていた自分も、結局は同じ場所を目指していた。そのことに、誰かが気づいてくれていたのだと思う。
しつこく、粘り強く、諦めずに。
あの頃の自分に伝えるなら、この言葉かな。
何も知らないところから始まった僕が、今ここにいる。
それは、自分の力ではない。
助けてくれた人たちの力だ。
その恩を、これからも現場に返していきたいと思います。
